足利市の仙人ヶ岳中腹にある岩切鉱山探索

栃木県

探索日:2022年5月15日

桐生鉱山、小俣の不動院と浄運寺別院を見た後は、岩切鉱山探索へと向かいます。

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岩切鉱山とは

岩切鉱山とは栃木県足利市小俣町の岩切地区に有るマンガン鉱山で、仙人ヶ岳の中腹に位置しています。

手持ちの資料である『日本のマンガン鉱床』には以下の記載と共に、いくつかの坑道図が載っています。

岩切鉱山
足利郡小俣町岩切。両毛線小俣駅より7kmで岩切集落に達し、之より小渓に沿って北方に1kmで鉱床に達す。古くより知名の鉱山で、大正年代より岡田春一氏開発し、昭和8年頃江子木坑の富鉱帯を見出し、当時満州国錦西のマンガン鉱開発に成功していられた橋爪氏に譲られた。同氏は土山淸市・中沢一雄・藤田正行の諸氏の協力の元に経営され休山することなく今日まで来ているが、鉱床状態の複雑なため急速有利な採鉱が出来なかった。北から順に水果、江子の木、不動、中尾、穴の窪の5鉱床がある。

  • 水果抗:南北に伸びた素直な鉱床で、強珪化帯を伴う。調査当時は酸化鉱石のみ。
  • 江子の木抗:本鉱山の主抗体で、約2500トンの鉱石を産した。江子の木沢を挟んで南北に分かれ、南鉱床はさらに鍛冶屋場鉱床(一号)と二号鉱床に分かれる。(後略)
  • 不動抗:不動尊の祠の前に開坑した坑道で幅70㎝以下のよくきまつた板状鉱床であった。
  • 中尾抗:千枚珪岩の山腹に約100メートルに亘って転々と露頭の続いている素直な鉱床で、途中に約100トンの富鉱を産した鉱塊があり、同様の鉱化帯が伸びて一つの褶曲帯を作り、その褶曲の軸部に牛蒡直りが出来たものが穴の窪抗であった。

また別の手持ちの資料である『日本地方鉱床誌』には以下の記載が有ります。

岩切鉱山
栃木県足利郡尾俣町、両毛線小俣駅北方4Km。
古生層中の鉱床。鉱石は炭マン、バラ輝石、ハウスマン鉱。
品位:Mn34~40%。
1939年から44年・51年マンガン1075トン、1951年マンガン197トン。
権者:前田正雄。

江子の木2号抗の断面図としては『マンガン鉱床における1かせ断層について』にも示されています。

岩切鉱山探索

さて岩切鉱山探索です。
岩切鉱山は仙人ヶ岳の中腹にあり、どうやら仙人ヶ岳の登山道脇に有るとの事。

 

仙人ヶ岳周辺といえば多数のマンガン鉱山があり、山を挟んだ反対側の桐生市方面には、茂倉沢鉱山、朝日沢鉱山、上菱鉱山、黒川鉱山、穴切鉱山など、既に訪問した鉱山跡だけでもこれだけあります。
その中でも今回の岩切鉱山は大規模な物らしいので期待が高まります。

 

仙人ヶ岳の登山道には岩切地区から入ります。
標識にもある名草巨石群付近にもいくつかのマンガン採掘跡があるらしいことは確認済みなので、そのうち探索に行かないといけない場所です。

 

山道に入ったところでいきなり1メートル以上ある青大将が寝そべってます。
死んでいるわけではなかったので、追い払って先に進みます。

 

暫く歩くと林道は細くなり、沢に沿った登山道になります。

 

かたくり群生地の標識と立派な炭焼き窯の跡。
幾つかの登山ブログなどを見るとこれが岩切鉱山の坑口と記載してあったりしますね。この辺りはかつて炭焼きが盛んだったのか、この後も幾つも炭焼き窯跡を見かけます。

 

かたくり群生地を越えると登山道は沢と一体化。雨の後に来た日には沢登りになりそうですね。

 

沢沿いを歩いていると唐突にレールが出てきます。
こんな山の中に落ちているレールとなると、岩切鉱山で使用していたものでしょうか?

 

レールの規格なども知っていれば面白いのでしょうが、残念ながらそちらの知識は無いので眺めるだけに。

 

廃レールから少し歩くと金網で仕切られているものの、坑口らしきものを発見。

 

近寄ってみると鉱山の旧坑口である記載と共に立入禁止の標識があります。
この岩切鉱山は関東東北鉱山保安部と栃木県工業課によって管理されているようです。

 

この坑口はコンクリートで補強されています。

 

金網の隙間から覗いてみますがあまり深く掘られていない様子。
ここは坑口がコンクリートで補強され扉が付けられていたような跡が残っているのと、他の坑道から少し離れた場所にあるので、なんとなくですが火薬庫の跡の様な気もします。

 

 

火薬庫らしき最初の坑口を後にして先に進むと、登山道から外れた斜面にマンガンのズリ石らしきものが有るのが目に留まります。
ズリ石だとすると斜面の上部にマンガンの採掘跡があるはずなので、登山道を外れて斜面を登ります。

 

斜面を登った先には怪しい窪みが。

 

近寄ってみるとどうやらマンガンの採掘跡のようです。

 

しかも地面には結構な長さのレールが刺さっています。
先に登山道で見つけたレールはここから流されていったものでしょうか・

 

坑道の中を覗き込むと奥に続いており、先で左に曲がっているか、斜坑で下に続いている様子です。

 

坑道の奥に入って探索しようと思いましたが、入り口付近にはかなりの量の落ち葉が溜まっており、さらにはその先で地面から数本のレールが飛び出しています。
もしかしたら坑口付近にも落ち葉に隠れた竪坑がありそうな予感なので入るのは取りやめて坑口付近からの観察にとどめます。

この坑口ですが資料などの位置関係からすると、どうやら不動抗と思われます。
結構大きい坑口跡ですが、ネットでは出て来てないですね。

 

さて不動抗を確認したのでズリの斜面を下ります。

 

登山道に復帰してから直ぐに岩切生満不動尊に到着。
先ほどの不動抗もここから名前が来ているのだと思われます。

 

岩切生満不動尊からちょっと先に進むとズリでできた平場が目に入ります。

 

ここは昔の鉱山施設跡の様です。

 

この辺りは岩切鉱山の中心地のようで、沢沿いにはいくつもの石積みが見られます。

 

当時は鉱山道ですが、今は登山道として再利用されていますね。

 

周囲には再び金属ネット囲われた坑口が有ります。

 

金属ネットの隙間から覗いてみると、結構奥まで続いている様子。
位置的に鍛冶場屋抗の一号抗か二号抗の可能性が有りそう。

 

この付近はマンガン採掘時のズリ石だらけ。
沢全体がズリ石で覆われています。

 

この付近から江子の木鉱床と思われます。
斜面上に石垣や金網に囲われた坑道跡が見えるので行ってみます。

 

斜面を登る途中にもいくつかの採掘跡や坑口が開いています。

 

この付近のメイン坑道らしい場所。
ここだけ金網が綺麗に切られていますが、誰か侵入したのでしょうか。

 

ここは明確に立ち入り禁止となっているので、中には入らず金網の隙間から坑道内をチェック。

 

奥は斜坑?のようになっており上部からズリ石がなだれ込んでいます。
もしかしたら手前側も斜坑になっており、下部の坑道に続いているのかもです。
ここは場所と坑道の位置から鍛冶場屋抗2号抗の気がします。

 

坑口付近から登山道の有る沢を見下ろした様子。
比較的高さと斜度があるので、下の登山道に人が居ないことを確認し落石に注意して下ります。

 

沢まで下って、江子の木鉱床と思われる場所。ここは江子の木鉱床の南側エリアに位置します。
ここには比較的大きな坑口がいくつか開いています。

 

この坑口は上の画像の物と奥で繋がっているようです。

 

覗き込むと奥で繋がっており光が差し込んでいるのが見えます。

 

ライトで照らした坑道内の様子。

 

この周囲にもいくつかの坑口が口を開けています。

上の金網で囲われた坑口の内部の様子。

 

こちらは半分塞がれた坑口。

 

隙間から覗き込んでみると正面と左に分岐し、それぞれ奥まで続いている様子です。

 

江子の木鉱床の真ん中付近にはこじんまりとした「岩切鉱山」の案内板が有ります。

 

この案内板が断っている場所が江子の木沢らしいです。

 

ここは沢沿いに坑口がいくつも開いているので、金網で坑口付近が囲われています。

 

江子の木沢の奥に登り振り返った様子。

 

柵の内側の坑口や採掘跡。

 

周囲の斜面にはマンガン鉱脈に沿って掘られたと思われる採掘跡が見られます。

 

こちらは沢の真下を通る坑道。
それなりに深さが有りそうです。

 

 

岩切鉱山のメインエリアの探索を終えたので、登山道を進み仙人ヶ岳山頂を目指します。

 

登山道の途中にはこんな丸太橋を進むところも。
橋事態は見た目以上にしっかりしていたのですが、橋を渡り終わった先のトラロープ斜面が結構怖かったり。

 

このエリアにも炭焼き窯跡が残っています。

 

登山道終盤の熊の分岐へと向かう最後の急斜面。
この表記ではかわいらしく書いてありますが、結構な角度で何度か立ち止まって休憩しないと登れないほど。
ちなみにこの付近に水果抗が有るらしいので、探しながら登りましたが残念ながら見つからずでした。

 

熊の分岐に向かう登山途中にはマンガンを含んだと思われる鉱石の露頭も見られます。

 

そして熊の分岐に到着。
ここまで来たら後は稜線沿いに仙人ヶ岳方面に進むだけです。

 

そして久しぶりの仙人ヶ岳山頂に到着です。

 

仙人ヶ岳では少し休憩し次の荒倉鉱山探索へと向かいます。

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