鹿沼市の引田鉱山本坑探索

栃木県

探索日:2022年5月8日

今回は板荷駅を中心に、引田鉱山本坑、引田鉱山岩花抗、菊澤鉱山の探索に向かいました。

板荷と言えば以前板荷鉱山にも探索に来ています。その時の探索記録はこちらから。

板荷鉱山で石探し
2021年1月3日に栃木県鹿沼市の板荷鉱山を探しに行ってきました。 ネット情報ではトパーズ、蛍石、サファイアなどが出たことがあるとのことで、目標はそれらの石です。 とりあえず最寄りとみられる下小代駅から歩いていきます。 ...

引田鉱山とは

現在の栃木県鹿沼市引田に位置する鉱山で、主に亜鉛や鉛などを採掘していた鉱山です。
金属鉱物の他に石英も取れた様で、少ないながらも紫水晶の産地としても鉱物ファンには知られているようです。

資料としては『日本地方鉱床誌』『日本鉱産誌』『鉱物採集の旅1 (関東地方とその周辺)』に、引田鉱山についての記載が有ります。

日本地方鉱床誌には以下の記載が有ります。

引田(曳田)鉱山
栃木県鹿沼市引田にあり、東武日光線新鹿沼駅の北西約12キロの大芦川に沿っている。
鉱床は流紋岩、石英安山岩に貫かれた古生層粘板岩、砂岩中の7条の鉱脈で走向30~50E、傾斜はほぼ垂直である。
鉱石鉱物は主として石英、閃亜鉛鉱、方鉛鉱、黄鉄鉱である。
粗鉱の平均品位は銅1.3%、亜鉛14%であった由で、戦時中小規模に稼行された。

日本鉱産誌I-Bには以下の記載が有ります。

曳田(引田)鉱山
栃木県鹿沼市(旧東大芦村)引田。
武日光線新鹿沼駅の北西約12キロ。大芦川に沿う。
古代粘板岩・チャート等の互層とこれを覆う凝灰岩および貫く石英粗面岩・石英安山岩あり。
鉱床は主として粘板岩中の鉱脈7条、走向30~50E、傾斜ほぼ垂直。
鉱石は黄銅鉱、閃亜鉛鉱、黄鉄鉱、方鉛鉱、石英。品位は平均銅1.3%、亜鉛14%。
従業員は28名、1938年から45年に稼行し、出鉱量は亜鉛212トン、鉛5トン。
鉱業権者:伊東芳松

鉱物採集の旅1 (関東地方とその周辺)には以下の記載が有ります。

(前略)大きなズリ山と選鉱場あとへ出ます。これが引田鉱山本坑の名残です。
選鉱場の跡のコンクリート枠が残っている辺りには、真鍮色金属光沢の黄鉄鉱、黒褐色の閃亜鉛鉱を沢山含む塊が転がっています。黄鉄鉱の中には径1㎝ぐらいに及ぶものがあります。(中略)磁石に吸いついたら磁硫鉄鉱です。あるいはまたもっと色が黒く、同じように磁石につく物が有ったら、それは磁鉄鉱です。以上の鉱物はコンクリートの枠に近い所で拾えますが、奥の方にも少しあります。石英脈の所々に晶洞があって、小さな水晶の結晶が有ります。また、綺麗な紫水晶のかけらを拾った人も有りました。しかしそれがどこから出たかまだ詳しくはわかっていません。ここの鉱床で興味があるのは、石英脈や母岩の割れ目に淡黄色の自然硫黄が出る事江、うすい膜のようになっていることもあります。また、このような形で霰石の出る事も知られています。(以下略)

引田鉱山本坑探索

さて引田鉱山本坑の探索ですが、最寄り駅の板荷駅からスタートです。

最寄りと言っても板荷駅から引田鉱山本坑まで5キロほど離れているので、1時間程歩くことになります。

移動途中では黒川を渡ります。
橋から見下ろすとオイカワやウグイかと思われる魚が泳いでいるのが見えます。

黒川を渡ってからはしばらく上り坂。
上り坂のピークには比較的松坂トンネルがあるので抜けていきます。

距離は約700メートル。

2016年3月にできたとの事で、比較的新しいトンネルの様です。

トンネル内は明るいし、歩道も有るので歩行者にも優しいですね。

 

トンネルを抜けてたら引田鉱山が有ったと思われる付近の林道に入ります。
林道を少し歩くと怪しい平場を発見。

 

平場には鉱山のズリ石と思われる石が落ちています。
こちらは錆びた石。金属を多く含んだ鉱石が酸化したものと思われます。

 

そしてその付近には木の枝で埋められた怪しい陥没跡。
埋もれた坑口でしょうか・・・。

 

さらに周囲を探索すると下部に茶色い池らしきものが見えます。
引田鉱山本坑は金属を含む鉱水が流れ出しているとの情報も有ったので、鉱山関係の水の可能性が高そうです。

 

斜面を下っていきますが、かなり急なのと倒木が多くなかなか進めません。

 

斜面を下る途中にイノシシの物と思われる獣道が有ったので、それを利用して鉱山廃水エリアに到達。

 

金属鉱山でよく見る、茶色い鉱山廃水が流れ出ています。
この水、そのまま近くの沢に垂れ流されているのですが、大丈夫なのでしょうかね?

 

鉱山廃水エリアには石垣も見られます。

 

鉱山廃水エリアの全体はこんな感じ。
平場が広く浸水しており湿地帯のようになっています。

 

浸水しているエリアを歩くと埋まりそうなので、平場の端をぐるっと回って歩きます。
この平場は結構広く、鉱山が稼働している当時はいろいろな施設が有ったのかと思われます。

 

平場を回って鉱山廃水の流れ出ている大元へ。
どうやらここが引田鉱山本坑跡のようで、埋没した坑口からて鉱山廃水が流れ出しているようです。

 

水が流れ出している場所にはコンクリートで作られた水路跡の様な物も見られます。

 

鉱山廃水の湿地帯エリアの全体はこんな感じです。

 

動画でも撮影してみたので、興味が有りましたらどうぞ。

 

 

引田鉱山の本坑跡と思われる場所を確認したので、周囲も探索してみます。

 

浸水していた平場から少し離れると、土が盛られたエリアを発見。

 

結構高く盛られています。
鉱山跡で土が盛られている場所と言えばアレの可能性が高そう。

 

盛り土を乗り越えてみると出てきました火薬庫跡!

 

金属製の屋根は錆びて落ちてしまっていますが、建物自体は残っています。
火薬庫の跡と思われる土塁は何度か確認したことが有りますが、明確な火薬庫事体を見るのは初めてなのでテンションが上がります。

 

石材のブロックで作られた壁と、重厚な金属の扉が良いですね。
ただ周囲には家庭用の危険物と思われるゴミが捨てられているのが残念。
地域の人が捨てているのか、鉱山跡は日用品のゴミが捨てられていることが多いですね・・・。

 

折角なので火薬庫を回れる範囲で半周。

 

横から。

 

裏側から。

 

火薬庫周囲の盛り土の様子。

 

火薬庫の跡は火薬庫の裏手の斜面を登り、最初のエリアに戻ります。
最初のエリアは軽く見て回っただけなので、再度探索してみます。

周囲をウロウロすると、斜面にズリ石と思われる石が転がるエリアを発見。

 

ズリ石エリアで石を探すとそれらしい石がゴロゴロしています。
こちらはミニ水晶クラスターのある石と、黄鉄鉱だか黄銅鉱が混じる石。

 

こちらは錆びていてわかりにくいですが、黄鉄鉱か黄銅鉱が有る石。

引田鉱山は紫水晶なども取れるそうなので、もう少し真面目に探せば良い石も取れるかもです。

 

そして最初に見つけたこの陥没は、ズリ石の位置からしても坑道跡の可能性が高そうです、

 

 

引田鉱山本坑の採掘エリア探索後に次の場所へ向かうために歩いていると、引田鉱山から50メートル程離れた山沿いに何かの遺構を発見。

比較的大きなコンクリートの遺構が見られます。

さらにはかなり古そうなベルトコンベアーまで。

これらは『鉱物採集の旅1』にも記載の有った、引田鉱山の鉱山施設跡の可能性が高そう。
もう少し近くで見たかったのですが、道路と遺構の間には沢が流れており、遺構が有る付近は手入れをされており、人家の敷地内の様だったので確認できず。
周囲に誰かいれば声をかけて確認することもできたのですが、あいにく誰もおらずで、対岸からのズーム撮影のみ。

 

それと引田鉱山本坑ではこんな瓶を発見。
今では見かけないような形なので、鉱山稼働時に捨てられた何かの瓶の様です。
泥で汚れていた物の、割れたりはしていなかったのでお持ち帰り。
初のボトルディギングです。

そして持ち帰って洗った瓶の様子はこんな感じ。
瓶の口が非常に小さく、中を洗うのが大変でしたが、それなりに綺麗にすることが出来ました。
形状的には現在の目薬のボトルに近い形なのですが、いったい何の瓶だったのか気になります。

というわけで引田鉱山本坑探索終了です。
お次は少し離れた場所に有るらしい、引田鉱山岩花抗を探しに向かいます。

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