長瀞町の西浦採銅坑跡探索

埼玉県

探索日:2021年5月15日と2023年2月23日

西浦採銅抗跡とは

西浦採銅抗跡とは埼玉県秩父郡長瀞町井戸の荒川沿いの岸壁にある銅の採掘坑跡です。

銅の採掘がいつから行われていたかは不明ですが、1830年(文政13年)の『新編武蔵風土記稿』に西浦採銅抗とされる坑道が記載されていることから、江戸時代には既に採掘が行われていたようです。

長瀞町では指定文化財として西浦採銅抗跡が登録されていますが、概要には「荒川右岸の絶壁から東南方向の坑道」とだけしか記載されておらず詳細は不明となっています。また、埼玉県立自然の博物館の資料『ジオパーク秩父のジオサイト再選定方針』では、西浦採銅抗跡は「アクセスと安全性の問題から現状難ありとされ」ジオパーク秩父非選定サイト一覧に記載されています。

埼玉県立自然の博物館の『埼玉県長瀞地域における自然銅の分布・産状および採鉱記録』では、現在は入り口が荒川の土砂により埋没しており、内部の確認は不可能と記載あり。なお、過去に実測されたようで、長さは約100メートル、幅員2~4メートル、高さ1.5~4メートル、坑道の天井と地表間は4~5メートルと、現地の看板に記載されている内容と同様になっています。

 

『長瀞町誌長瀞の自然』には以下のように記載されています。

西浦採掘坑は荒川の攻撃面にあたり岸壁の中腹の黒色片岩中に、南東に向かって高さ1.5メートルから4メートル、幅2.4メートル、延長80メートルの坑道が掘られている。岩盤はしっかりしているため、坑内はほとんど崩落もなく、原型をとどめている。

坑口から20メートルほど入ったところで坑道は南東に向きを変え、50メートルを過ぎたところで北東へ曲がり、60メートル付近で再び南東へ向きを変える。坑口から60メートルを過ぎたあたりから奥は、坑道の天井が礫層に代わる。結晶片岩中の自然銅を求めて掘り進んだが、礫層が出てきたのでそれ以上の採掘を断念したのであろう。

なお同資料には坑口付近の画像が掲載されています。

(長瀞町誌の長瀞の自然より)

野上町教育委員会が1971年に編集した『のがみ文化財をたずねて』には坑道内部の写真が掲載されているとの事。

 

参考資料:『埼玉県長瀞地域における自然銅の分布・産状および採鉱記録』『ジオパーク秩父のジオサイト再選定方針』『長瀞町誌長瀞の自然』

 

西浦採銅坑跡は2021年5月15日と2023年2月23日の2回にわたって探索しています。
一度目の探索では坑口の上部のみで断念。そして2回目の探索では坑道内へと入る事に成功しました。

まずは2021年5月15日の探索です。

 

2021年5月15日の西浦採銅坑跡探索

銅の入沢の銅採掘跡の探索後は西浦採銅坑跡を探しに行きます。

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今回も埼玉県立自然の博物館研究報告である「埼玉県長瀞地域における自然銅の分布・産状および採鉱記録(PDFファイル)」を元に探索します。

(埼玉県長瀞地域における自然銅の分布・産状および採鉱記録より引用)

西浦採銅抗跡探索

西浦採銅抗跡ですが、埼玉県県道82号を歩いているとこんな標識が出てきます。

一方には「白鳥神社」や「大手桜」などが記載されていますが、もう一方は意図的に表示が消された痕跡が有ります。

 

消された標識の方に入っていくと「西浦採銅抗跡」を紹介する看板ががやぶの中から出てきます。

看板には以下の内容が記載されています。

西浦採銅抗跡は、新編武蔵野国風土記稿所載「岩穴六ケ所」の中の一つに数えられている。
荒川河流の絶壁から東南に向かって硬い岩盤の間を、高さ1.5~4.0メートル、幅員2.4メートル、延長100メートルの坑道が整然と掘削され、坑内はほとんど崩落もなく、完全に原型をとどめている。坑道の天井から地表までは4~5メートルあると推定される。
この坑道とは別に法善寺裏山には延長60メートルの二か所の採銅抗跡があり、その坑内から採取された銅鉱塊等が、法善寺や長瀞の自然史博物館等に所蔵されている。
また明治時代の中頃、足尾銅山の古川市兵衛とこの地区から採掘した銅鉱石を取引したとの古老の話も伝えられているが、確かな記録は残っていない。

なかなか興味深い内容です。

ちなみに法善寺裏山とは先に訪れた銅の入沢の坑道の事の様です。

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さて看板を見た後は西浦採銅抗跡らしき場所を覗き込んでみますが、断崖絶壁で見られず。

 

無理やりやぶ漕ぎをして荒川沿いに出てみます。
西浦採銅抗跡は正面に見える岩肌の反対側。
岩を登ることも川の中に入ることも難しそうなので断念。

 

再度採銅抗の上に戻り、周囲に生えていた木に体を預けてみます。
穴の真上まで見えましたが、中は覗き込めません。

 

ちなみにこんなに切り立った崖なので、落ちたらただではすみません。

 

今度は反対側に回り込んでみます。

すると今度は西浦採銅抗の坑口を見る事が出来ました。

見た感じ結構しっかりした坑道の様です。
ロープでもあれば下まで降りられそうですが、断崖絶壁なので無装備で眺めるにはこれが精いっぱい。

 

階段か何かが有ったような痕跡が残っていたので、消された標識ややぶの中に紹介の看板が有る事から、過去には観光地として下に降りる事が出来たのかもです。

 

西浦採銅抗跡は上部から眺める事しかできなかったのでこれで終了。
秩父鉄道の樋口駅へと向かいます。

 

途中で渡った荒川。

 

そしてゴールの樋口駅。

 

駅の前の学校には過去の大水を今に伝える看板が。

 

ここは荒川の水面から約18メートルの高さにあり、1742年の洪水ではここまで水位が上がったそうです。

 

 

2023年2月23日の西浦採銅坑跡再探索

今度は2023年の2月23日の再探索の記録になります。
前回は西浦採銅坑の坑口にたどり着けず坑口を上から眺めただけでしたが、今回は何とか坑口にたどり着くことができ坑道内を探索することに成功。

 

探索日が冬だったこともあり藪の草が生えていなかったので、下まで行けそうなルートを探りつつ竹藪と岩盤エリアを慎重に下ります。

 

何とか川べりにたどり着きますが、川も岸際から深さと水流が有るので落ちないように進みます。

 

そして坑口の真下に到着。
この岩の隙間を登っていきます。

 

坑口直下の最後の難関。
この崩落した岩を乗り越えます。

 

そして坑口到着。
ここで準備をしていざ潜入です。

 

坑道内は見た感じ崩落なども無く保たれています。
高さも有るので立ったまま移動できるので助かります。

 

坑道上部には真っ黒な鉱脈らしきものが見られます。

 

鉱脈が有ったと思われる場所は、上部も深く掘り込まれています。

 

更に奥へと向かいます。

  

 

これは崩落した石の様です。
しっかりしている様に見える岩盤も崩落が有るようなので注意して進みます。

 

入り口から少し進むと、湿度も上がり蒸し暑くなります。
非常にじめじめしているとの地熱の影響か暖かく、2月の気温なのに汗をかくほど。

湿度が高いためか坑内に霧のようなのも立ち込めてます。

 

この辺りから中央に水抜き用の水路と思われる物も掘られています。

 

ここで坑道が右に折れます。

 

坑内の地面には水抜き用の水路が掘られているので、そこを進みます。

 

いったん折れた坑道は今度は右に曲がり再度左に曲がります。

 

そして突き当り?

 

この辺りは川の増水時の影響か、河原の物と思われる小石が溜まっています。

 

突き当りかと思ったらさらに右から左へと続いています。

 

この付近から動物の糞と思われるものが溜まっています。
何かの種子を食べているようで、種の部分が残されています。

そしてこの糞が坑道内の湿度と相まって非常に臭いので辛いです。

糞の中の種子からは1本だけもやしの様に発芽しています。
ここは全く日光が届かないのですが、発芽するものなのですね。

 

さらに進むとまた突き当りの様な場所。
それと、正面の丸い石が頭部に、白い物が骨の様に見えて人骨かと思い、最初は凄くビビったり。

 

おっかなビックリ進んだら丸い石と動物の糞から発芽した芽でした。

 

そんな感じで一安心しましたが、この先も狭いながらまだS字状に続いています。

 

曲がった先は少し掘った跡が残っていましたが、鉱脈は無かったようで坑道自体は左に曲がります。

 

そしてその先でまた右に。

 

この付近の坑道は天井部が大きな礫岩になっており、崩落しそうで怖いです。

 

礫岩エリアを進むとまた左へ。

 

そしてその先。
画像を撮り忘れてしまったのですが、二手に分かれているも両方とも礫岩が崩落し行き止まり。
さらに奥には数匹のハクビシンがウロウロしていました。
所々落ちていた糞はここを住処にしていたハクビシンのものの様です。

 

というわけで無事に西浦採掘銅坑を探索したので坑口へと戻ります。
ちなみに西浦採掘銅坑内部を探索した様子も動画で撮ったので興味のある方はどうぞ。


西浦採掘銅坑探索後は良い時間になったので、樋口駅へ向かいます。
駅に到着しましたが電車まで時間が有ったので近くの荒川を散策。

釣りに良さそうは淵が有ったので眺めていたら、正面の岩場に橋脚の跡の様な物が見えます。

 

近寄ってみたら石を積まれてできた3つの橋脚跡が残されていました。
昔はここに橋が架かっていたようです。

 

荒川で時間をつぶしてから樋口駅へ。
ここから電車で帰宅し、探索を終えました。

 

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