飯能市は北川にある日電鉱山探索

埼玉県

探索日:2022年3月12日

この日は飯能市の吾野方面のマンガン鉱山跡を探索しに行きました。
まずは北川の空龍林道沿いに有ったらしい、マンガン鉱山の日電鉱山を探しに行きます。

 

ちなみに、今回紹介するマンガン鉱山以外の日高市や飯能市周辺のマンガン鉱山は、以下のページでもまとめているので良かったらご覧ください。

埼玉県飯能市周辺のマンガン鉱山まとめ
このブログを始めてから埼玉県内の鉱山を探索することが多くなり、比較的家から近い飯能市周辺のマンガン鉱山を探索することが増えてきました。そんな中、飯能市にはどのくらいの数のマンガン鉱山があるのかとふと思いました。 飯能市のマンガンの数と...

 

日電鉱山とは

さて今回探索する日電鉱山とは、吾野の北川の空竜林道付近に位置したとされるマンガン鉱山です。手持ちの資料である日本のマンガン鉱床には以下のように記載と位置図が有ります。

日電鉱山
入間郡吾野村柏木。
昭和15年吉田良吉氏により開発された鉱山で、それま迄は1号抗より二酸化(マンガン)を若干採掘したのみである。
2号抗は石灰岩に接近し、水平に近い厚レンズ状鉱床であった。ブラウン鉱を中心に含む栗色炭マンで、眞名子型(真名子型)一部大和型という様な鉱床である。
3号・仏穴共に栗色炭マンを産し、1号鉱は殆ど完全に酸化鉱となっていた。
1号鉱は突出する大きい塊状珪岩の中の不規則な鉱床で、延長方向の判定に苦しんだ。

どうやら日電鉱山は1号抗から3号抗まであり、付近に有った仏穴からもマンガンを採掘していたとの事。
空竜の仏穴については以前に探索しています。

飯能市は北川にある空竜の仏穴探索
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なお、この資料に出てくる吉田良吉氏は、飯能地域や奥多摩地域でいくつものマンガン鉱山を開発した人で、奥多摩の白丸鉱山、鋸山鉱山、川乗鉱山、簾川鉱山などを手掛けています。
このうち鋸山鉱山については過去に探索しています。

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日電鉱山については「日本鉱産誌」「埼玉県地下資源報告書」などにも名前が出てきますが、何れも「古生層中の鉱床、石灰岩に接近する水平に近いレンズ状。1号抗は塊状珪岩中の不規則な鉱床。ブラウン鉱、炭マン、酸化マンガン鉱の鉱石が採れた」としか書かれていません。

ネットで検索しても名称だけで場所については何も出てこない謎の鉱山でもあります。

日電鉱山探索

西部秩父線の西吾野駅からスタートです。

まずは道なりに歩いて北川は柏木地区まで向かいます。
そこからは林道空竜線へと入ります。

まずは以前に地元の人に教えてもらったマンガン坑道跡へ向かいます。

以前の探索の様子はこちらから。

飯能市は北川の空竜にあるマンガン鉱山探索
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この日の坑道内は湿度が高かったのか、霧というか靄がかかっています。

 

坑口の様子。

坑口付近も土砂が溜まっており、そのうち埋没してしまいそうなので、10センチほど崩しておきました。

 

さてここからが日電鉱山の本格的な探索になります。
ちなみにこの時は上記の坑口を日電鉱山の2号鉱と勘違いしており、探索時間を大幅にロスしてしまいます。

先の坑道を2号抗と勘違いしたまま、日本のマンガン鉱床の図に有った沢の上部にあると思われる3号抗を探します。
とりあえず沢を上部に攻めてみます。

沢を遡ったり、こんな斜面をウロウロしたりしますが、鉱山跡らしきものは見つかりません。

それにしても炭焼き窯の跡はどこにでも有りますね。
昔の人は良くこんな場所まで来て作業をしていたものですね。

探索途中には何かの結晶化した鉱石も。

そしてこの沢の最上部付近まで来ましたが、何も見つからなかったのでいったん下って仕切り直し。

 

沢を下って林道まで戻ったところで、再度日本のマンガン鉱床の図を眺めます。
よく見ると2号鉱と思っていた坑口と、以前に訪れた仏穴の位置が縮尺的に合わないことに気が付きます。

これは位置が確実な仏穴を基準に探索をした方が良さそうと思い、いったん仏穴に向かいます。
この岩の上部に仏穴があるので、いったんその付近まで登ります。

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仏穴付近には浸食された様な石灰岩らしき岩もゴロゴロしています。

鉱床の図では仏穴とほぼ同じ等高線上に有ると思われる1号鉱を探す作戦に。
仏穴まで登り、その後は高度を保ったまま斜面をひたすらトラバースし、同じ高度にあると思われる1号鉱を探しに向かいます。

画像ではわかりにくいのですが、足を滑らしたら沢底まで滑落しかねない斜度の斜面を歩きます。

 

無理に斜度をキープしたままトラバースしていたので、途中ではこの岩の上部に出てしまい、降りる場所が無くこの岩場を下ってきました。
今思えばこんな苔だらけの岩、よく滑落せずに下ってこれたものだと思います。

流石にこれは無謀だと感じたので、この探索直後に斜面探索用にザイルを購入しました。

岩場を降りた場所はこんな感じの谷間。とりあえずこの辺りを探索します。

斜面沿いの岩場を歩いていると、怪しい場所が。
これは坑口か?と思い近寄ってみます・・・。

しかし残念ながらハズレ!
ただの窪みでした。

ですが、そのすぐ先に本当の坑口が。

早速中を覗きますが、残念ながら2~3メートルほどの試掘。

試掘抗から坑口付近を見るとこんな感じの、浅い試掘跡です。

仏穴を基準に日本のマンガン鉱床の図の通りに探したら見つけた坑口なのですが、これが1号抗なのでしょうか?
他にも坑口が有るのではと周囲を探しましたが、残念ながらこれ以外には見つからず。
ただの試掘なのか、これが1号抗なのかは不明ですが、とりあえずマンガンの採掘跡を見つける事が出来たので一安心。

 

お次はこの1号抗と思われる採掘跡を基準に2号抗と3号抗を探します。
1号抗から別の沢に入りしばらく歩くと、斜面に1か所だけ石組が有るのを発見。

近寄ってみるとマンガン鉱山からのと思われる、黒い石のズリが見つかります。

ズリは斜面から転がってきているので、その斜面を登っていきます。
途中にそれっぽい岩場が有りますが、ここではなくさらに上部で掘っている様子。

登っているのはこんな斜面。
何度も足を取られて滑りますが、ズリ石を追って上部を目指します。

斜面を登りながら探していると、再び石組を発見。

そしてその近くには坑口が空いています!
これが2号抗でしょうか。

中を覗くとこんな様子。
黒い岩の部分を掘っているので、マンガン採掘跡の様です。

坑道は坑口から2~3メートルぐらいで行き止まりかと思ったら、右奥に隙間が続いているのを発見。

入り込んでその隙間を覗くと、さらに奥を数メートル掘っていました。

坑道内のマンガンズリの様子。

坑道内部から坑口を振り返るとこんな感じ。

これまた図の通りに坑口を発見することが出来ました。

2号抗と思われる坑口からでて斜面を見ると、さらに上部からマンガン採掘跡のズリと思わる石が落ちてきているのに気が付きます。

斜面の上を見上げるとこんな場所です。
ここもまたかなりの急斜面なのですが、マンガンズリが落ちて来ているとなると登って確かめに行くしかないですね。

斜面の中腹は相変わらずズリが落ちています。

 

マンガンズリの斜面を尾根付近まで登ると、石垣に坑口とこれまた素敵な鉱山遺構が出てきます。

まずは下部の坑口から確認。
坑口付近は土砂で埋まっており、30センチぐらいしか隙間が有りません。

坑口の隙間から覗き込んでみると坑道内はこんな感じ。
見た感じ5~6mほど続いており、もしかしたら右側に曲がっていそうな感じもします。

坑口が埋まっており狭いのと余り奥までは続いていなそうなので、今回坑道内には入らず。坑口上部の石垣付近を見に行きます。

坑口が有る場所を一段登ると平場が有ります。

平場から先の坑口を見下ろすとこんな感じ。

平場の上部はさらに石垣が有りますね。
とりあえず上部は後回しで、平場付近を探索します。

平場をちょっと進むと坑口が有ります。

坑口に近寄ってみると残念ながらほとんど掘られておらず。
試掘程度ですね。

 

ちなみに坑口の平場の先はこんな感じ。
崩れ方が不自然なので、もしかしたらマンガン鉱石の露天掘りをしていたのかも。

 

平場の奥から振り返ると、先ほどの坑口の上にももう一つ坑口が有るようなので行ってみます。

上の坑口の付近にも立派な石組が有ります。

 

 

石組を登って上の坑口に到達。

こちらも残念ながら数メートルしか掘っていないようです。

坑口の中はこんな感じ。

坑道内のマンガンズリ。

良い鉱脈が有ったのか、狸掘りっぽくなっている所も。

 

坑道内には誰かが落としたと思われるライトも落ちていました。
かなり古いようですが、時には鉱物採集の人も来ているのかもですね。
日電鉱山は何か珍しいマンガン鉱物が取れるのでしょうか。

坑道内から坑口付近を振り返るとこんな感じ。

 

坑口の形がどことなく猫っぽいですね。

 

さて、このエリアでも小規模ながら坑口がいくつかあったのですが、これが日本のマンガン鉱床の図の3号抗でしょうか?
今回の場所は2号抗と思われる場所のほぼ真上に有ったので、図とは位置が若干離れている気もするので、さらにもう1か所坑口が有るかもです。

 

とりあえず今回の日電鉱山探索はある程度の成果が有ったので終了。
当時の鉱山道らしき道から尾根道を歩いて下ります。

尾根道を順調に歩いていたら途中から沢方面に降りてしまい大変なことに・・・。

さらには鹿に3匹も遭遇し、日電鉱山探索はなかなかのアドベンチャーでした。

 

お次は少し離れていますが吾野の長沢に有るマンガンを採掘していたと思われる、長沢鉱山に向かいます。

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